2008年3月7日金曜日

現金以外で給与を支払う①

 現金以外で給与を支払う方法といったら、まず思いつくのがストックオプションだと思います。会社法の改正もあり、企業の資本政策にはストックオプションがいろいろと活用されてます。特に資金力の乏しいベンチャーでは、優秀な人材を確保するために、ストックオプションを現金給与の代わりとして有効に活用する必要があります。
まずは、ストックオプション関するルールから考えてみます。
 
 【会計基準によるルール】
 上場企業、上場準備企業に関してはまず一番関係してくるのが企業会計基準によるルールです。  

 『ストックオプションを付与する時点の付与時点の公正な評価額を費用計上する。』

という基本原則です。
  
 なんと、ストックオプションを付与すると、原則費用計上が必要なのです。お金が出ているわけではないのに…。
 で、会計基準の基本趣旨を簡単に説明すると、公正な評価額とは、簡単にいってしまえば株価から権利行使価額を差し引いたものだと考えてもらって構いません(正確には違うのですが…)。なお、株価がついていない上場準備会社では、公認会計士に自社の株価を算定してもらって、そこから権利行使価額を差し引いて求めます。
 例えば、株価@100円、権利行使価額@60円の場合は、@40円が公正な評価額となります。
 
 そして、費用計上した金額はストックオプションの付与日(ストックオプションをあげた日)から実際に権利行使が可能となる日までの期間で按分します。
 例えば、×1年1月1日が付与日、×2年12月31日が権利行使可能日の場合は2年間で按分することになります。上の例でいうと、毎年@20円が費用計上されるわけです。もし、付与日=権利行使可能日の場合は、付与日に全額費用計上します。
 
 現金で報酬を支払うならば費用となるのに、ストックオプションという権利で支払うと費用にならないのおかしいですよね?
 そこで、ストックオプション会計基準を適用して、ストックオプションを報酬として付与した場合の費用も計上させようしているのです。
 
 【会計基準をよく読んでみると…】
 ストックオプション会計基準は、役員、従業員に付与したものについてのみ適用対象となっています。つまり、社外の協力者に対して付与したものについては、ストックオプション会計基準が適用されず、費用計上が必要との明確な記述がないのです。この点少々不備かなと思います。いろいろと画策できそうな気がしますね。
 
 あと、ストックオプションの評価額の見直しの規定が存在しません。アーリー時点でとりあえず、ストックオプションを付与しておけば、実際に公開できそうで株価が大きく上昇しそうな場合でも評価見直しの必要がなさそうです。アーリー段階で大幅赤字の会社なら、前記の公正な評価額もほぼゼロ、会計上認識する費用もほぼゼロなこともありそうです。ストックオプションを大量に発行(資本政策を無視したとして)する動機にもなりそうですね。

 

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