では、ストックオプションの代わりに現物株式(自己株式)を支給した場合はどうなのでしょうか?
【自己株式を給与とした場合】
前回と同じ条件で、時価9万円の自己株式(取得時の時価も9万円とします)を給与として支給した場合の結果考えてみます。自己株式に関する会計基準に従って考えると、
自己株式の支給時受取金額-自己株式の取得原価=自己株式処分損益
よって、
0円(給与として支給するので受取金額0円)-9万円=△9万円
となります。
この『自己株式処分損益』は損益となっておりますが損益計算書は経由しません。資本取引として『自己株式処分損』がその他の資本剰余金に計上され、貸借対照表上の処理だけで完結してしまいます。
つまり、自己株式は、従業員に支給しても費用計上がないのです。
【3つの給与支給方法を比較すると】
現金支給、ストックオプション発行、自己株式支給のそれぞれの方法による会計上の処理を簡単に比較してみます。
前回と同じく従業員に9万円(相当額)の給与を支給するとしましょう。この場合の支払方法としては下記の3つの選択肢があるのですが、
1)現金9万円を支給→9万円が費用計上
2)公正な評価額が9万円のストックオプションを発行→9万円が費用計上
3)時価9万円の自己株式を支給→資本項目から控除のため、費用計上無し
のように、いずれも経済的には同じ価値を支給しているにもかかわらず、その支払方法の違いで異なる会計処理が行われることになります。
語弊があるかもしれませんが、上記から考えると、自己株式を給与として支給することは費用計上を行わずに給与を支払える方法であると言えるかもしれません。
取得に際してキャッシュの流出はありますが、それは1)現金支給の場合も同じですし。
給料をもらうほうの希望も関係しますが、自己株式の活用も検討する価値はありますね。
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