さて、自己株式による給与支給が、現金支給やストックオプション発行の場合と違う会計処理となってしまうのはなぜでしょうか。
それは、会計基準が自己株式は資本の払い戻しと考えていることによります。
【現金支給と自己株式支給の比較】
従業員から見ると、自己株式はこれを給与として支給できることから分かるように、それ自体にプラスの価値があるものです。つまり、この点に関しては現金給与となんら異なる点はありません。
現金給与を支払った場合は、
(借方)費用 ×× / (貸方)現金 ×× →損益計算書
(借方)利益剰余金 ×× / (貸方)費用 ×× →貸借対照表
と損益計算書を経由する処理がされます。損益計算書を経由するため、最終的には利益剰余金が減少します。
であるならば、自己株式を支給した場合も
(借方)費用 ×× / (貸方)自己株式 ×× →損益計算書
(借方)利益剰余金 ×× / (貸方)費用 ×× →貸借対照表
と処理されるべきです。
しかしながら、会計基準はこれと別の考え方をしています。
自己株式は取得した時点で、(なぜか)資本が払戻されると考えているのです。したがって、自己株式を会社が取得した時点で、
(借方)資本剰余金 ×× / (貸方)自己株式 ×× →貸借対照表
と上記の仕訳を圧縮したような形で、一気に損益計算書を経由しない処理がされます。損益計算書を経由しないため、最終的には資本剰余金が減少します。
【自己株式のワンステップ処理】
つまり、会社が自己株式を取得後に給与として支給しても費用計上されないのは、既に取得時点で、損益計算書を経由せずに処理が完了してしまっているからなのです。
①自己株式の取得時点で一気に処理が行われる点、②損益計算書を経由しない処理が行われる点が、ポイントです。
取得時点で既に価値はゼロと考えている以上、その後、それをタダで従業員に支給しようとも、会計上はなんら関係しないということですね。
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