2008年3月24日月曜日

決算を粉飾する①

 会社が粉飾決算に至ってしまうのは、2つの理由があると思います。粉飾する動機と粉飾できる環境です。

【したいという動機としなければならないという動機】
 多くの企業は決算における利益をもとに役員報酬やボーナスを決定します。とすれば、決算報告は株主に対して経営者の成果をアピールする大きな機会です。さらに、決算がよければ株価は大きく上昇するかもしれません。すると、ストックオプションを保有する役員にも大きな利益をもたらすことになります。
 もし、多額の報酬、ボーナスやストックオプションの利益を得ることのできる可能性があるのならば、粉飾をしてでも業績を良く見せようという動機は起こりえますよね。
 
 一方、銀行や取引先、あるいは国やお役所に対して一定の業績結果を示さなければならない会社もあります。銀行からの借入金について一定の自己資本比率を下回った場合に一括返済する条件(いわゆる財務制限条項)や、ある一定水準の利益を計上しないと業務免許が取り消されてしまうような行政規制を付けられている会社です。
 もし、これらの条件をクリアしないと会社が潰れてしまう状況だとしましょう。そうならば、粉飾をしてでもそれを業績をよく見せようようとする動機も十分に考えられます。

【予測と選択というルール】
 普通、儲かったかどうかを皆さんはどう判断されるでしょう?お金が増えたか減ったかどうかの事実で判断すると思います。
 ところが、会社の決算では違うのです。実際にお金が増えたり減ったりする前に、増える減るという(原因に基づいて)予測を経営者が立てて、儲かったかどうかを判断してしまいます。
 つまり、お金の動きと関係なく、むしろそれより先に儲けを決めてしまうのです。これを発生主義といいます。
 もちろん、予測は経営者の好き勝手にできるわけではなく、ある一定の条件に縛られるわけですが、この一定条件も複数あり、選択することが可能です。
例えば、商品を売るときには、

 1)商品を出荷したときに儲かったと判断する方針
              ↓
   商品出荷時点で売上をたてる。

 2)商品が相手に研修されたときに儲かったと判断する方針
              ↓
   商品検収時点で売上をたてる。

といった条件が選択できるわけです。
このような選択できる条件を会計方針といいます。

 するとどうでしょうか。粉飾をしたい経営者は、当然、儲かっているという予測を立て、自分の予測を裏付けることができる会計方針を適用したいと思うはずです。

 もちろん、動機があっても、それを実現できる余地がなければ粉飾はできません。ところが、企業会計は予測と選択というルールを導入しました。その結果、粉飾の動機がより実現されやすくなる余地が作り出されてしまったともいえなくはありません。

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